softic Question 基礎-1

OSS とはどのようなものですか、また、ライセンスにはどのような内容が書かれているの
ですか?

1-1  OSSとは何か?

1-1 答え
OSS とは、ソースコードが入手可能であり、誰でも自由に複製や改変、配布1ができる条
件で提供されているソフトウェアのことです。OSI(Open Source Initiative)2が OSS の
定義を定めていますので、具体的な条件については、以下の WEB サイトを参照してくださ
い。
●The Open Source Definition
https://opensource.org/osd

1-2 フリーソフトウェアと OSS の違いは何か?

1-2 答え
日本国内で無償公開されているソフトウェアの中には「フリーソフトウェア」や「フリ
ーウェア」と呼ばれるものがあります。これらはソースコードが公開されているとは限り
ません。また、ライセンス条件で一定の制限が課されているものもあり、必ずしも自由に
複製や改変、配布ができるとは限りません。したがって、「フリーソフトウェア」や「フリ
ーウェア」の中には、OSS の定義に合致しないものもあります。
一方、Free Software Foundation が定義している「フリーソフトウェア」は、誰でも自
由にソフトウェアの実行ができ、ソースコードの改変や配布を行うことができる条件で公
開されているソフトウェアです。したがって、基本的な考え方は、OSS とほぼ同じ3です。
フリーソフトウェアの定義については、以下の WEB サイトを参照してください。
●The Free Software Definition
https://www.gnu.org/philosophy/free-sw.en.html

1-3 代表的な OSS は?

1-3 答え
著名な OSS の例としては、OS である Linux や Android、プログラム開発言語の java
や perl、ruby、開発フレームワークの Eclipse、JavaScript 用のライブラリである
jQuery、データベースの PostgreSQL や MySQL、WEB サーバの Apache HTTP Server、
その他、近年では、クラウド基盤である OpenStack やサーバ運用管理用の Zabbix 等があ
ります。

1-4 ライセンスとは?

1-4 答え
OSS のライセンスは、各 OSS の著作権者が定めたものであり、OSS の利用者に対して
許諾する行為とその条件、あるいは禁止する行為等が記載されています。

1-5 GPL および LGPL(最新版は v3) とは?

Free Software Foundation で作成されたライセンスです。
GPL が適用された OSS(GPL プログラム)を改変して、このプログラムに基づく
著作物(派生著作物)を作成し、配布する場合、その全体について GPL の条件を遵守
する義務があります。この条件により、GPL プログラムと他のプログラムをリンクや
結合した場合、他のプログラムにも GPL の条件を適用する必要があります。
LGPL は、GPL の条件を少し弱めたライセンスです。LGPL が適用された OSS
(LGPL プログラム)と他のプログラムをリンクした場合、リンクした他のプログラ
ムに LGPL を適用する必要はありませんが、リバースエンジニアリングを許諾する(禁
止しない)義務があります。
最新のバージョンは GPLv3 ですが、GPLv2 の OSS も多数、存在しています。GPLv3
で追加された条件としては、OSS で実施された特許権について、当該 OSS の開発者が
保有する特許権を許諾する条件や、ユーザ製品に OSS を利用する場合には修正した
OSS を再インストールできるように、「インストール用情報」を提供する義務などが追
加されました。また、LGPLv3 については、GPLv3 の追加的許諾条項となりました。
なお、GPL や LGPL は、OSS を配布した際に条件が課されるため、誰にも配布しな
い場合は、ソースコードの提供等の義務はありません。これをカバーするために
AfferoGPLv3 が作成されました。このライセンスは、クラウドサービス等のサーバで
OSS(AfferoGPLv3)を利用した場合、(OSS のバイナリを配布しない場合でも)サー
バにアクセスするクライアントへソースコードを提供する条件がGPLv3に追加された
4
ライセンスです。

1-6 CPL v1.0とは?

IBM で作成されたライセンスであり、CPLv1.0 が適用された OSS(CPL プログラ
ム)を配布する場合は、ソースコードも提供する義務があります。また、CPL プログ
ラムのコントリビュータに対する特許訴訟(訴訟対象は OSS に限定されていない)を
制限する条件があります。

1-7 EPL v1.0とは?

Eclipse Foundation で CPLv1.0 を基に作成されたライセンスであり、上記②記載の
特許訴訟の制限が削除されました。

1-8 MPL(最新版は v2.0) とは?

Mozilla Foundation で作成されたライセンスですが、もともとは Netscape
Communications の弁護士により作成されたものです。MPL が適用された OSS(MPL
プログラム)のソースコードを配布する場合は、ソースコードも提供する義務があり
ます。
最新のバージョンは MPLv2.0 ですが、MPLv1.1 の OSS も多数、存在しています。
MPL v2.0 で追加された条件としては、GPL関連のOSSと組み合わせて配布する場合、
“Secondary License”(GPLv2.0/LGPLv2.1/AfferoGPLv3.0、以降のバージョンを含
む)を適用することを許諾するか否かを定めることができるようになりました。

1-9 Apache License(最新版は v2.0)とは?

Apache Software Foundation で作成されたライセンスです。
最新のバージョンは Apache License v2.0 ですが、Apache Software License v1.1
も多数、存在しています。
Apache Software License v1.1 は、ドキュメントへの謝辞の記載義務があります。
Apache License v2.0 では、謝辞の記載義務は削除され、開発者による著作権や特許
権の許諾が明確になりました。

1-10 BSD Licenseとは?

カリフォルニア大学で作成されたライセンスであり、制限は緩く、著作権表示と許
諾リスト、免責条項を記載する義務があります。
以前の OLD BSD License(4-Clause)には、宣伝媒体に所定の謝辞を記載する条件
がありましたが、NEW BSD License(3-Clause)では、削除されました。2-Clause
の BSD License もあり、3-Clause から開発者名等の利用許諾に関する条件を無くし、
ソースコードとバイナリの配布条件を記載したライセンスです。

1-11 MIT License とは?

マサチューセッツ工科大学で作成されたライセンスであり、制限は緩く、著作権表
示と許諾表示を記載する義務があります。BSD License(2-Clause)と利用条件は類似
していますが、MIT License では、サブライセンスの許諾等、著作権者が許諾する内
5
容が細かく記載されています。

1-12 CC ライセンス(最新版は v4.0) とは?

クリエイティブ・コモンズで作成されたライセンスであり、条文とは別に、条件を
マークで示すことで分かりやすくしたライセンスです。マークにはクレジットの表示
義務、営利目的での利用禁止、改変禁止、ライセンス継承義務の4種類があり、これ
らの組み合わせにより条件を示します。
なお、本ライセンスは、OSI 承認のライセンスには含まれていません。

1-13 OSI により OSS の定義に合致しているとして承認されたライセンスとは?

OSI により OSS の定義に合致しているとして承認されたライセンスについては、以下の
WEB サイトに掲載されています。
●Licenses by Name(Open Source Initiative)
https://opensource.org/Licenses/alphabetical
●OSI 承認オープンソースライセンス 日本語参考訳
https://osdn.jp/projects/opensource/wiki/Licenses

1-14 よくあるライセンス条件とは?

各 OSS の著作権者は、自らが開発した OSS について、他人が複製や改変、譲渡等、著
作権法上の利用行為を行なうことについて、コントロールする権利を持っています。した
がって、OSS の利用を許諾する際、自由に様々な条件を定めることができます。
よくある条件としては、例えば、以下のようなものがあります。
①OSS を配布する際には、その OSS の著作者が定めたライセンス文書を添付すること
②OSS を配布する際、OSS に含まれていた知的財産関連の情報(著作権表示等)を残し
ておくこと
③OSS を利用した製品に、その OSS が含まれている旨の記載を行なうこと
④OSS を改変する際には、誰が、どのような改変を行なったのかを記載しておくこと
⑤OSS を改変して提供する際には、改変者が含めた自らの特許権を改変版の利用者に許
諾すること
⑥OSS のバイナリを提供した相手に OSS のソースコードも提供すること
⑦上記⑥に加えて、OSS と他のプログラムをリンクや結合等して作成した派生著作物を
配布する場合、全体のプログラムのソースコードも提供して、同じ OSS のライセンス
を適用すること
世の中の状況を見ると、OSS のライセンス条件に違反しているとして訴訟等のトラブル
に発展しているケースは、上記⑥⑦のようにソースコードの提供義務があるライセンスに
関連しているものが多いようです。

 

1-15 近年、多いライセンスは?

世の中には、多数の OSS が様々な場所で公開されているため、どのライセンスの OSS
が多いかを集計5することは困難です。参考情報になりますが、ソースコードの管理サービ
スを行っている GitHub が 2015 年 3 月 10 日に発表した情報によると、GitHub 上のプロ
ジェクトが採用しているライセンスは、MIT ライセンスが最も多く、約半数弱がこのライ
センスを採用しているということです。その他、GPLv2、Apache License と続いています。
●Open source License usage on GitHub.com
https://github.com/blog/1964-open-source-License-usage-on-github-com